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2026年3月19日 十和田市現代美術館 椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる

十和田市現代美術館 椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる 2026年6月6日(土) - 11月8日(日) https://towadaartcenter.com/exhibitions/tsubaki_noboru/ ⼗和⽥市現代美術館では、2026年6⽉6⽇(⼟)から 11⽉8⽇(⽇)まで、現代美術家‧椿昇(つばき‧のぼる)の個展「フリーダムー像(ゾウ)と⽣きる」を開催します。巨⼤⽣命体の造形を通して、現代の資本主義社会に問いを投げかけてきた椿昇。彼の表現は、常に⼈間の欲望と⽭盾をあぶり出してきました。⼗和⽥市現代美術館の外庭に佇む真紅の巨⼤ロボットアリ《アッタ》(2008)は、⽇本で唯⼀の椿の恒久展⽰作品として、そのインパクトのある姿が、訪れる⼈々の⽬を惹きつけ続けています。 椿はこれまで、巨⼤⽣命体を通して環境破壊や格差拡⼤といった社会の諸問題を探究してきました。現代を⽣きる私たちは、こうした問題を⽇々のニュースやSNSなどを通して、無数のイメージ(像)(ゾウ)と共に⾒聞きします。しかし、それらについて深く考え、他者と意⾒を交わす機会は、果たしてどれほどあるのでしょうか。 英語で「ザ‧エレファント‧イン‧ザ‧ルーム」という慣⽤句があります。⼤きく扱いにくい問題や、タブー視されてきた事実など、誰もが気づいていながら、あえて話題にすることを避けてしまう状況を指します。それは⼀⾒、克服すべき課題のようにも⾒えますが、こうした不合理で曖昧な習慣や規範によって、私たちの社会の秩序が保たれている側⾯があることもまた事実です。では、この同調圧⼒が不可避な社会のなかで、⾃由であること(フリーダム)とはどういうことなのでしょうか。 本展は、制作活動40年を超える椿昇が本展のために新たに制作する地上最⼤の哺乳類「ゾウ」を中⼼に、実態を⾒て⾒ぬふりをしがちな私たちの⽇常の⾏為や思考のあり⽅を問い直します。私たちはこの社会でどう⽣きるのか。本展は椿昇とともに探究する貴重な機会となるでしょう。 ■Image ・「椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる」メインビジュアル デザイン:美山有 ・《the Elephant in the Room XL》のドローイング 2025年 ©️椿昇 ・《the Elephant in the Room XL》のマケット 2025年 ©️椿昇 ・《アッタ》2008年 十和田市現代美術館 撮影:小山田邦哉

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2026年3月19日

十和田市現代美術館 椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる

十和田市現代美術館 椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる 2026年6月6日(土) - 11月8日(日) https://towadaartcenter.com/exhibitions/tsubaki_noboru/ ⼗和⽥市現代美術館では、2026年6⽉6⽇(⼟)から 11⽉8⽇(⽇)まで、現代美術家‧椿昇(つばき‧のぼる)の個展「フリーダムー像(ゾウ)と⽣きる」を開催します。巨⼤⽣命体の造形を通して、現代の資本主義社会に問いを投げかけてきた椿昇。彼の表現は、常に⼈間の欲望と⽭盾をあぶり出してきました。⼗和⽥市現代美術館の外庭に佇む真紅の巨⼤ロボットアリ《アッタ》(2008)は、⽇本で唯⼀の椿の恒久展⽰作品として、そのインパクトのある姿が、訪れる⼈々の⽬を惹きつけ続けています。 椿はこれまで、巨⼤⽣命体を通して環境破壊や格差拡⼤といった社会の諸問題を探究してきました。現代を⽣きる私たちは、こうした問題を⽇々のニュースやSNSなどを通して、無数のイメージ(像)(ゾウ)と共に⾒聞きします。しかし、それらについて深く考え、他者と意⾒を交わす機会は、果たしてどれほどあるのでしょうか。 英語で「ザ‧エレファント‧イン‧ザ‧ルーム」という慣⽤句があります。⼤きく扱いにくい問題や、タブー視されてきた事実など、誰もが気づいていながら、あえて話題にすることを避けてしまう状況を指します。それは⼀⾒、克服すべき課題のようにも⾒えますが、こうした不合理で曖昧な習慣や規範によって、私たちの社会の秩序が保たれている側⾯があることもまた事実です。では、この同調圧⼒が不可避な社会のなかで、⾃由であること(フリーダム)とはどういうことなのでしょうか。 本展は、制作活動40年を超える椿昇が本展のために新たに制作する地上最⼤の哺乳類「ゾウ」を中⼼に、実態を⾒て⾒ぬふりをしがちな私たちの⽇常の⾏為や思考のあり⽅を問い直します。私たちはこの社会でどう⽣きるのか。本展は椿昇とともに探究する貴重な機会となるでしょう。 ■Image ・「椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる」メインビジュアル デザイン:美山有 ・《the Elephant in the Room XL》のドローイング 2025年 ©️椿昇 ・《the Elephant in the Room XL》のマケット 2025年 ©️椿昇 ・《アッタ》2008年 十和田市現代美術館 撮影:小山田邦哉

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2026年3月19日 弘前れんが倉庫美術館 風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼

弘前れんが倉庫美術館 風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼 会期:2026年6月5日(金)〜11月15日(日) https://www.hirosaki-moca.jp/exhibitions/kazama-sachiko/ 風間サチコ(1972年生まれ)は、黒一色で刷られた木版画で、近代化によって形づくられてきた日本社会の矛盾や違和感を描いてきました。オリンピックや原子力をめぐる出来事、学校などの身近な風景まで、私たちの日常と地続きの社会の出来事を、独自のユーモアと鋭い批評性を交えて表現しています。 本展では、近年の大型木版画に加え、作家が新たに取り組む油彩画を初公開します。油彩画には、弘前で出会った一冊の本がきっかけとなって生まれた「白鳥」を描いたシリーズを展示。他にも、青森県内の合浦(がっぽ)公園や浅所(あさどころ)海岸といった風景が登場し、歴史や文学、伝説のイメージと重ね合わされます。 社会のなかに潜む、言葉にしにくい違和感。人が世界をどう感じ、どう想像するかを大事にする風間の表現は、私たちの日常を別の角度から照らし出します。思わず笑ってしまうようで、どこか引っかかる。そんな社会の姿が、風間の視点から浮かび上がります。 ■Image ・展覧会メインビジュアル ・風間サチコ《白鳥の聲が聞こえる》2026年 作家蔵 ©︎Sachiko Kazama Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production  Photo by Kei Miyajima ・風間サチコ《噫!怒涛の閉塞艦》2012年 東京都現代美術館蔵 Photo by Kei Miyajima ・風間サチコ《ありがとう、我が愛する白鳥よ!》2026年 作家蔵 ©︎Sachiko Kazama Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production  Photo by Kei Miyajima

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2026年3月19日

弘前れんが倉庫美術館 風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼

弘前れんが倉庫美術館 風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼 会期:2026年6月5日(金)〜11月15日(日) https://www.hirosaki-moca.jp/exhibitions/kazama-sachiko/ 風間サチコ(1972年生まれ)は、黒一色で刷られた木版画で、近代化によって形づくられてきた日本社会の矛盾や違和感を描いてきました。オリンピックや原子力をめぐる出来事、学校などの身近な風景まで、私たちの日常と地続きの社会の出来事を、独自のユーモアと鋭い批評性を交えて表現しています。 本展では、近年の大型木版画に加え、作家が新たに取り組む油彩画を初公開します。油彩画には、弘前で出会った一冊の本がきっかけとなって生まれた「白鳥」を描いたシリーズを展示。他にも、青森県内の合浦(がっぽ)公園や浅所(あさどころ)海岸といった風景が登場し、歴史や文学、伝説のイメージと重ね合わされます。 社会のなかに潜む、言葉にしにくい違和感。人が世界をどう感じ、どう想像するかを大事にする風間の表現は、私たちの日常を別の角度から照らし出します。思わず笑ってしまうようで、どこか引っかかる。そんな社会の姿が、風間の視点から浮かび上がります。 ■Image ・展覧会メインビジュアル ・風間サチコ《白鳥の聲が聞こえる》2026年 作家蔵 ©︎Sachiko Kazama Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production  Photo by Kei Miyajima ・風間サチコ《噫!怒涛の閉塞艦》2012年 東京都現代美術館蔵 Photo by Kei Miyajima ・風間サチコ《ありがとう、我が愛する白鳥よ!》2026年 作家蔵 ©︎Sachiko Kazama Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production  Photo by Kei Miyajima

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2026年1月25日 【N&A Art SITE】NANJO SELECTION vol. 8 フカミエリ『夢は魚のようにはねている』開催決定(2/13-3/7)

N&A Art SITEでは、2026年2月13日(金)から3月7日(土)まで、NANJO SELECTION 第8弾としてフカミエリの個展『夢は魚のようにはねている』を開催いたします。 ■開催概要 展覧会名:NANJO SELECTION vol. 8 フカミエリ『夢は魚のようにはねている』 会期:2026年2月13日(金) - 3月7日(土) 12:00-17:00 (日)(月)休 会場:N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6 / 東急東横線中目黒駅より徒歩5分) 主催:エヌ・アンド・エー株式会社、アートジーン合同会社 フカミは自分と世界における「こころの在りか」を起点に絵画表現を行う作家です。描かれる人や生き物、自然などを思わせる形は、記憶や夢、感情を映すように描かれ、平面に広がる豊かな色彩の揺らぎとともに現れては溶け合います。 その制作はさまざまな場で発表され、2024年には美術館に作品が収蔵されるなど、着実な展開を見せています。本展では、フカミが近年取り組んできた作品に加え、東京藝術大学大学院油画第6研究室に在籍し、修了を間近に控える現在の制作にも焦点を当てます。 見えないけれど、この世界にあるかもしれない。そのような世界を、あらためて絵画の中で見つめる機会となるでしょう。 ※出展作品のうち一部は会場での申込にて販売しております。メール等での申込は承っておりません。 ※プライスリストは会場のみでのご確認をお願いいたします。 ■作家ステートメント 小さいころ、山の近くで育った。 坂道が多くて、どこへ行くにも車がないと不便な町だった。 夏になると、近くのジャスコで毎週日曜日、 カブトムシの幼虫が水あめの容器に入れられて配られた。 私はそれを宝物をもつように抱えて帰った。 ベランダに出ると午後の光がまぶしくて、ブラスチックの蓋が白く光っていた。 その大きなプラケースに飼育用の土を入れ、幼虫をそっと埋めた。 次の日も、つぎのひも、幼虫はいつも土の中に潜っていてとてもつまらなかった。 カブトムシ見たいなあっと土を掘ったり、いじくったりしていたら 「蛹になってるかもしれないから、やめようね」と母にちくりと言われた。 朝よりも昼、昼よりも夜、寝る前にずっと気持ち悪いけどかわいいあいつが気になって、 とうとう我慢できなくなって次の日曜日車を出してもらいジャスコに向かった。 朝の子供たちが並ぶ列で、大人のおじさんが容器を1つ1つ手渡ししている。 番が待ち切れなくて、列の紐を触ったり、ポールを蹴ったりしながら遊んだ。 私の番になって、壊れないようにそっと受け取り、手にぬくもりを感じながらその場を離れた。 小さな動きまで見える様に目を凝らすと、ところどころ小さなシワが寄っていてその肌にびっしり並ぶ 黒い点々が不思議に思えた。図書館で調べてみると、その黒い点々は「気門」と呼ばれる呼吸のための器官だった。こんな小さな身体の中にも、ちゃんと息づく世界があるんだと思った記憶がある。 気づけば、幼虫は12匹になっていて、ブラスチックの容器も2個に増えていた。 西陽が差し込むべランダで透明な蓋が金色に光っていた。 小さな世界が、そこに静かに呼吸していた。 あの頃見ていた山はとても大きかった。 登ってみると、山は土でできていて土は砂で出来ていた。 大きなものも結局は小さなものの集まりなんだ。そう気づいた時、 世界の見え方が少し変わったような気がした。 テレピンを出して絵の具を混ぜているとき、世界の始まりを少しだけ思い出すような気がする。 粘土をこねるように、ナイフで他を作って、それを大きい刷毛で馴染ませる。 真っ白いキャンバスに薄めた絵の具をザパッとかけると、地の色と重なった膜が生き物みたいな形に見える。 淡く溶けたところ、くっきりと残った境目、その間にできる呼吸のような揺らぎ。 そこにまた別の色を重ねてみる。 色が重なって、透明な場所、濃い場所、ぼやけた場所、 その全部の奥行きを見ながらどこが手前でどこが遠くなのかじっと見つめる。 曖味な世界の中に、人や生き物や自然を線で描いていく。 気づけば、あの子供のころに見ていた山が近づいたり遠ざかったりしていている。 その揺らぎを、記憶の奥から筆の先へと手渡すように線を引く。 描いていると、絵の中の誰かがふとこちらを見て「もうここまででいいよ」と囁くように感じる。 この声を受け取って、筆を止める。 少し離れて絵を眺めると、絵はもう自分よりもずっと強い光を持って立っていた。 「この世界はどんな世界なんだろう」 土が姿形を変えても、元は別の何かだったように、 私も人の姿形をしているけれど、色んな存在の続きを生きている。 見えないけれど、この世界にあるかもしれない。 大きいかもしれないし小さいかもしれない世界をキャンバスの中で探している。 フカミエリ ■NANJO SELECTIONについて 長年、現代美術の普及に尽力し、その間多くの作家、作品に出会ってきましたが、それでもまだ新しい発見を求めて、内外多数の展覧会を見て歩いています。そして多くの作品に出会い、作家との対話を重ねた中から、表現上の独自の発展を模索し、成果を上げ始めている比較的若手の作家に焦点を当て、その活動を紹介していきたいと思います。 決して万全とは言えない日本のアート環境の中で、新しく登場した作家たちの意義ある業績を美術史の文脈の中に位置づけながら国際的に紹介していくことは、日本の美術業界の喫緊の課題だと思われます。 1年に4人程度の作家を逐次ご案内申し上げます。ぜひご覧ください。 NANJO SELECTION ウェブサイト:https://nanjo-selection.com/ ■vol. 8 フカミエリについて いつからか、普遍的な物語の時代はおわり個人的で個別的でヴァナキュラーな物語の時代になった。物語は作者の内的で揺れ動く夢想と、未来に対する不安と期待がないまぜになった世界である。登場する人物は神話的であると同時に作者自身でもあるだろう。抽象化された人物の輪郭は不思議な存在感を示し、見つめる目差しは見る人に強い問を投げ返している。この微妙で堅固な身体と、朦朧とした夢の世界がフカミの魅力である。フカミはパーソナルな物語の語り部である。世界は、無数の現実と無数の物語で満ちているのだ。 南條史生 ■フカミエリ 大阪生まれ、東京藝術大学 大学院 修士油画第6研究室在籍。 自分と世界における「こころの在りか」をテーマに制作している。 人間の意識を作っているのはなんだろうか。とある瞬間に、デジャヴを感じたり。夢の中で何度も繰り返される光景を見たり。「なにか」に出会って感動したり。私達が、意識せずとも。こころが、感情が、記憶が、私よりも正確に「世界の在りか」を教えてくれる。 【展示についてのお問い合わせ】 N&A Art SITE(エヌ・アンド・エー株式会社) artsite@nanjo.com 03-6261-6098 1.《人魚》2025, 油彩、カンヴァス 65.2×53.0cm 撮影:忽那 光一郎

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2026年1月25日

【N&A Art SITE】NANJO SELECTION vol. 8 フカミエリ『夢は魚のようにはねている』開催決定(2/13-3/7)

N&A Art SITEでは、2026年2月13日(金)から3月7日(土)まで、NANJO SELECTION 第8弾としてフカミエリの個展『夢は魚のようにはねている』を開催いたします。 ■開催概要 展覧会名:NANJO SELECTION vol. 8 フカミエリ『夢は魚のようにはねている』 会期:2026年2月13日(金) - 3月7日(土) 12:00-17:00 (日)(月)休 会場:N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6 / 東急東横線中目黒駅より徒歩5分) 主催:エヌ・アンド・エー株式会社、アートジーン合同会社 フカミは自分と世界における「こころの在りか」を起点に絵画表現を行う作家です。描かれる人や生き物、自然などを思わせる形は、記憶や夢、感情を映すように描かれ、平面に広がる豊かな色彩の揺らぎとともに現れては溶け合います。 その制作はさまざまな場で発表され、2024年には美術館に作品が収蔵されるなど、着実な展開を見せています。本展では、フカミが近年取り組んできた作品に加え、東京藝術大学大学院油画第6研究室に在籍し、修了を間近に控える現在の制作にも焦点を当てます。 見えないけれど、この世界にあるかもしれない。そのような世界を、あらためて絵画の中で見つめる機会となるでしょう。 ※出展作品のうち一部は会場での申込にて販売しております。メール等での申込は承っておりません。 ※プライスリストは会場のみでのご確認をお願いいたします。 ■作家ステートメント 小さいころ、山の近くで育った。 坂道が多くて、どこへ行くにも車がないと不便な町だった。 夏になると、近くのジャスコで毎週日曜日、 カブトムシの幼虫が水あめの容器に入れられて配られた。 私はそれを宝物をもつように抱えて帰った。 ベランダに出ると午後の光がまぶしくて、ブラスチックの蓋が白く光っていた。 その大きなプラケースに飼育用の土を入れ、幼虫をそっと埋めた。 次の日も、つぎのひも、幼虫はいつも土の中に潜っていてとてもつまらなかった。 カブトムシ見たいなあっと土を掘ったり、いじくったりしていたら 「蛹になってるかもしれないから、やめようね」と母にちくりと言われた。 朝よりも昼、昼よりも夜、寝る前にずっと気持ち悪いけどかわいいあいつが気になって、 とうとう我慢できなくなって次の日曜日車を出してもらいジャスコに向かった。 朝の子供たちが並ぶ列で、大人のおじさんが容器を1つ1つ手渡ししている。 番が待ち切れなくて、列の紐を触ったり、ポールを蹴ったりしながら遊んだ。 私の番になって、壊れないようにそっと受け取り、手にぬくもりを感じながらその場を離れた。 小さな動きまで見える様に目を凝らすと、ところどころ小さなシワが寄っていてその肌にびっしり並ぶ 黒い点々が不思議に思えた。図書館で調べてみると、その黒い点々は「気門」と呼ばれる呼吸のための器官だった。こんな小さな身体の中にも、ちゃんと息づく世界があるんだと思った記憶がある。 気づけば、幼虫は12匹になっていて、ブラスチックの容器も2個に増えていた。 西陽が差し込むべランダで透明な蓋が金色に光っていた。 小さな世界が、そこに静かに呼吸していた。 あの頃見ていた山はとても大きかった。 登ってみると、山は土でできていて土は砂で出来ていた。 大きなものも結局は小さなものの集まりなんだ。そう気づいた時、 世界の見え方が少し変わったような気がした。 テレピンを出して絵の具を混ぜているとき、世界の始まりを少しだけ思い出すような気がする。 粘土をこねるように、ナイフで他を作って、それを大きい刷毛で馴染ませる。 真っ白いキャンバスに薄めた絵の具をザパッとかけると、地の色と重なった膜が生き物みたいな形に見える。 淡く溶けたところ、くっきりと残った境目、その間にできる呼吸のような揺らぎ。 そこにまた別の色を重ねてみる。 色が重なって、透明な場所、濃い場所、ぼやけた場所、 その全部の奥行きを見ながらどこが手前でどこが遠くなのかじっと見つめる。 曖味な世界の中に、人や生き物や自然を線で描いていく。 気づけば、あの子供のころに見ていた山が近づいたり遠ざかったりしていている。 その揺らぎを、記憶の奥から筆の先へと手渡すように線を引く。 描いていると、絵の中の誰かがふとこちらを見て「もうここまででいいよ」と囁くように感じる。 この声を受け取って、筆を止める。 少し離れて絵を眺めると、絵はもう自分よりもずっと強い光を持って立っていた。 「この世界はどんな世界なんだろう」 土が姿形を変えても、元は別の何かだったように、 私も人の姿形をしているけれど、色んな存在の続きを生きている。 見えないけれど、この世界にあるかもしれない。 大きいかもしれないし小さいかもしれない世界をキャンバスの中で探している。 フカミエリ ■NANJO SELECTIONについて 長年、現代美術の普及に尽力し、その間多くの作家、作品に出会ってきましたが、それでもまだ新しい発見を求めて、内外多数の展覧会を見て歩いています。そして多くの作品に出会い、作家との対話を重ねた中から、表現上の独自の発展を模索し、成果を上げ始めている比較的若手の作家に焦点を当て、その活動を紹介していきたいと思います。 決して万全とは言えない日本のアート環境の中で、新しく登場した作家たちの意義ある業績を美術史の文脈の中に位置づけながら国際的に紹介していくことは、日本の美術業界の喫緊の課題だと思われます。 1年に4人程度の作家を逐次ご案内申し上げます。ぜひご覧ください。 NANJO SELECTION ウェブサイト:https://nanjo-selection.com/ ■vol. 8 フカミエリについて いつからか、普遍的な物語の時代はおわり個人的で個別的でヴァナキュラーな物語の時代になった。物語は作者の内的で揺れ動く夢想と、未来に対する不安と期待がないまぜになった世界である。登場する人物は神話的であると同時に作者自身でもあるだろう。抽象化された人物の輪郭は不思議な存在感を示し、見つめる目差しは見る人に強い問を投げ返している。この微妙で堅固な身体と、朦朧とした夢の世界がフカミの魅力である。フカミはパーソナルな物語の語り部である。世界は、無数の現実と無数の物語で満ちているのだ。 南條史生 ■フカミエリ 大阪生まれ、東京藝術大学 大学院 修士油画第6研究室在籍。 自分と世界における「こころの在りか」をテーマに制作している。 人間の意識を作っているのはなんだろうか。とある瞬間に、デジャヴを感じたり。夢の中で何度も繰り返される光景を見たり。「なにか」に出会って感動したり。私達が、意識せずとも。こころが、感情が、記憶が、私よりも正確に「世界の在りか」を教えてくれる。 【展示についてのお問い合わせ】 N&A Art SITE(エヌ・アンド・エー株式会社) artsite@nanjo.com 03-6261-6098 1.《人魚》2025, 油彩、カンヴァス 65.2×53.0cm 撮影:忽那 光一郎

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